7.02.2009

    遠洋漁業的なエヴァンゲリオン

    先日公開された「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」。新劇場版2作目の作品だ。この映画だが、オタク層はもちろんのこと、今までアニメに無関心だった人も興味を持っているよう。
    なぜか。恐らくマーケティングが成功したためだろう。さらに言えば、パチスロのおかげだ。エヴァンゲリオンのパチスロ機のヒットにより、今まで見たことがなかった層の人たちを大量に引きずり込んだ。アニメ業界から一度離れ、パチスロに徹するというのは、いわば遠洋漁業だ。違う分野まで自ら出向き、大量のファンを獲得する。

    また、もう一つはオトナアニメ(雑誌の名前だけど、ちょうどいいから拝借)を全面に押し出したことだ。エヴァンゲリオンはガキには分からない(特に、高校生~大学生はそう思っている)。そう思わせるほど謎めいた設定になっているのは周知の通り。高校生・大学生あたりの層にとってこれは大きい。彼らはオトナになるかならないかのまさに中間の中に位置しているわけで、自分で自らをオトナと認識したがっている。そんな世代に、エヴァンゲリオンを観ている(あるいは理解した、と勘違いする)ことは、自分もオトナの仲間に加わった感覚を持たせてくれる。

    80~90年前後の世代にとって、オタクという言葉は実はそれほどネガティブな意味を持っていない。それはおそらく、彼らが青春まっただ中である2005年の電車男ブームなどによる影響だろう。1989年に起こった宮崎勤による連続幼女誘拐殺人事件は世間から忘れ去られていたし、オタクにネガティブなイメージを持っている人は少ない。そして、エヴァンゲリオンの新規層ともなっているのがこの80~90年世代だ。彼らは自分たちのよりどころの1つとして、以前まで一種のタブーであったオトナアニメという選択を取り始めている。