腕には、いくつもの鋭い針を刺された跡が残っている。
どこにいるか分からない敵。
今は午前3時。
油断すると次々と刺してくる。
目をつぶり、聴覚を研ぎ澄ませていく。
奴に戦うときは目など飾りでしかなく、
頼りになるのはわずかな羽音だけだ。
そう、安らかな眠りについていた僕の神経を逆なでする不快な羽音。
蚊。
僕は面と向かって彼(あるいは彼女)と話がしたい。
刺すなとは言わない。
向こうもこっちを刺さないと生きていけないだろうから。
ただ、刺すときに変な物質を入れて、痒くさせないでもらいたい。
それが仕様で変更できないと言うなら、
年間50ミリ㍑の血液を提供しよう。
君たちには十分すぎる量だと思うけど?